中間成果物で精度を上げる(いきなりコードにしない)
この章でわかること: 指示(プロンプト)からいきなりコードに飛ばず、間に「中間成果物」を一枚挟むという考え方。 これだけで、生成の精度も、後から仕様を追える管理性も、ぐっと上がります。
なぜ「いきなりコード」だとズレるのか
Section titled “なぜ「いきなりコード」だとズレるのか”AIに「〇〇を作って」と頼むと、たいていはそれらしい物がすぐ出てきます。 問題は、AIが頭の中で補った前提が、あなたの想定とズレていても、 それがコードになって初めて表に出てくる点です。
- 「保存する」と言ったが、AIは「上書き保存」、あなたは「別名で残す」つもりだった
- 「ログインが必要」と言ったが、どの画面から必要なのかが食い違っていた
- 「一覧を出す」と言ったが、並び順や絞り込みの想定が違った
こうした食い違いは、動くコードを見ながらだと気づきにくく、 気づいたときにはあちこち直すはめになります。前提のズレは、早い段階ほど安く直せます。
間に挟むと良い中間成果物
Section titled “間に挟むと良い中間成果物”プロンプトとコードの間に置くと効くものを、軽いものから並べます。 全部を毎回作る必要はありません。仕様の複雑さに応じて選びましょう。
| 中間成果物 | 中身 | いつ効くか |
|---|---|---|
| 仕様書(要件の箇条書き) | やりたいこと・条件を短い箇条書きに | ほぼ毎回。まず前提を揃えたいとき |
| 画面一覧 | 必要な画面と、その役割の一覧 | 複数画面を行き来するアプリのとき |
| 各種ダイアグラム | シーケンス図・フロー図・状態遷移図 | 分岐や手順が多いとき |
| 実装プラン | どの順番で何を作るかの段取り | 作る量が多く、区切って進めたいとき |
| ADR(意思決定の記録) | なぜその選択にしたかを一枚に | 後から「なぜこうした?」を残したいとき |
図(ダイアグラム)の作り方と使い分けは、複雑な仕様を図で整理するで Mermaid の実例つきで扱っています。このページは、その一段上——図に限らず、 中間成果物を挟むと精度が上がるという考え方の話です。
ADR とは何か
Section titled “ADR とは何か”聞き慣れない言葉かもしれません。ADR は Architecture Decision Record の略で、 かみくだくと 「決めたことと、その理由を一枚に残すメモ」 です。
- 決めたこと: 例「連絡先の保存先は、まずスプレッドシートにする」
- 理由: 例「展示会まで時間がなく、営業側だけで運用できるのを優先したから」
- 見送った案: 例「本格的なデータベースは、件数が増えてから検討」
たったこれだけです。難しく考えず、**議事録の“決定版”**をイメージしてください。 数行で構いません。これがあると、数週間後の自分や、引き継いだ人が 「なんでこうなってるんだっけ?」で迷わなくなります。
進め方: 合意してからコードにする
Section titled “進め方: 合意してからコードにする”流れはシンプルです。コードに入る前に、人が一度うなずくのがポイントです。
- やりたいことをプロンプトでざっくり伝える
- AIに中間成果物(仕様書や図、必要ならプラン・ADR)を出させる ——まだ作らせない
- 出てきた成果物を人がレビューし、ズレを直す
- 合意できてから、それを土台にコードを作らせる
レビューといっても、コードを読む必要はありません。日本語の箇条書きや図が、 自分の想定と合っているかを見るだけ。ここは、要望を言葉にするのが得意な 非エンジニアの得意分野です(→良い指示の出し方)。
後から効いてくる「管理性」の利点
Section titled “後から効いてくる「管理性」の利点”中間成果物は、精度を上げるだけでなく、作った後にも効いてきます。
- 仕様を後から追える: 「この機能、どういう条件だったっけ?」を仕様書や図で確認できる
- 引き継げる: 別の人に渡すとき、成果物一式があれば経緯ごと伝わる
- AIに文脈を渡し直せる: 日を改めて続きを頼むとき、成果物を読ませれば AIが前提を思い出した状態から再開できる。ゼロから説明し直さずに済む
最後の点は特に実用的です。AIとの会話は一回ごとにリセットされがちですが、 中間成果物という文書が残っていれば、それが共有メモリの代わりになります。
実際の流れで見たいなら
Section titled “実際の流れで見たいなら”提案スライドを起点に、AIにブレスト→設計書を出させて確認→実装、と進める 一連の流れは、提案書から動くPoCを作るで通しの実例として 扱っています。「設計を確認したい」場面で設計書を出力させるくだりが、 まさにこのページの中間成果物の実践例です。
なお、出てきた物が良いかどうかの見極めは、生成物の良し悪しの見分け方も あわせてどうぞ。
AIは、指示さえあれば猛スピードで作ってくれます。だからこそ、走り出す方向を 最初に合わせることの価値が上がります。中間成果物は、その「方向合わせ」を 目に見える形にする道具です。急がば回れ——一枚挟むことで、結局いちばん速く、 いちばん確実にたどり着けます。
参考リンク(情報ソース)
Section titled “参考リンク(情報ソース)”- Architecture Decision Records(ADR 公式まとめ): https://adr.github.io/
- Documenting Architecture Decisions(ADR の原典・Michael Nygard): https://www.cognitect.com/blog/2011/11/15/documenting-architecture-decisions
- Mermaid 公式(図をテキストで書く記法): https://mermaid.js.org/